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堀切川・山口(健)研究室研究内容紹介

  1. 米ぬかを原料とする硬質多孔性炭素材料RBセラミックスの開発
  2. RBセラミックスを用いた低摩擦・耐摩耗摺動要素の開発
  3. RBセラミックスを用いた高摩擦材料の開発と応用
  4. もみ殻を原料とする硬質多孔性炭素材料の開発
  5. ボブスレーの力学解析及び低摩擦ボブスレーランナーの開発
  6. 摩擦・摩耗試験システムの開発
  7. 歩行中の靴底と床面のすべりに起因する転倒の防止に関する研究
  8. 高機能ねじ切り用タップの開発
  9. 肌触り感の良いティシューペーパーの開発

米ぬかを原料とする硬質多孔性炭素材料RBセラミックスの開発

米ぬかを原料とする硬質多孔性炭素材料「RBセラミックス」の開発を行っています. 「RB」は米ぬかの英単語「Rice Bran」の頭文字をとったものです. RBセラミックスは,わが国で年間約30万トン以上発生している搾油後の米ぬか(脱脂ぬか)と 熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂の混合物を炭化焼成することによって得られます(図1).

RBセラミックスの製造方法の概略図
図1 RBセラミックスの製造方法の概略図

こうして製造されるRBセラミックスは,米ぬかの炭化物である軟質の無定形炭素と, フェノール樹脂の炭化物である硬質のガラス状炭素から構成され, 米ぬか自身のセル構造とガラス状炭素の微細構造に由来する気孔を有する多孔質炭素材料です(図2).

RBセラミックスの微細構造及び細孔径分布
図2 RBセラミックスの微細構造及び細孔径分布

RBセラミックスは以下に示すような優れた特徴を有する高機能・多機能材料です.

  1. 低密度:RBセラミックスは,前述のように多孔質構造を有することから,そのかさ密度は,1.0〜1.5g/cm3を示し,一般的な熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂とほぼ同等の低い値を示す.
  2. 高強度:RBセラミックスの圧縮強度は180〜300MPaであり,多孔質の炭素材料としては,非常に高い値を示す.また,圧縮強度のワイブル係数(m値)9)が20を超える場合もあり,RBセラミックスは,工業材料として極めて強度のばらつきが小さい材料といえる.
  3. 低ヤング率: RBセラミックスのヤング率は,10〜15GPaの低い値を示す.
  4. 低摩擦:RBセラミックスは図3に示されるように相手材料によらず,常温・乾燥摩擦下で0.1〜0.2の低い摩擦係数を示す.また,200℃の高温下では0.05以下の非常に低い摩擦係数,水中においては0.1以下の低い摩擦係数を示す.
  5. 摩擦振動・摩擦音の抑制効果: RBセラミックスは図5に示されるように,大気中無潤滑下において,相手材料によらず,摩擦係数がすべり速度に対してわずかに増加する「正の速度依存性」を有する.(図4)そのため,スティックスリップに起因する摩擦振動や摩擦音の抑制効果を有している.
  6. 優れた耐摩耗性:RBセラミックスは,図3に示されるように大気中無潤滑下において鋼のおよそ1,000倍の高い耐摩耗性を示す.
  7. 電気抵抗の制御が可能:RBセラミックスは,焼成温度の制御により,絶縁体から導電体まで幅広く電気抵抗を変えることが可能であり,900℃で焼成した場合には,1.5×10-2Ω・cmの低い体積固有抵抗値を示す.
  8. 自然環境に優しい:RBセラミックスは,毎年生ずる農業系植物資源の有効利用を可能にしていること,使用後廃棄しても自然環境に害を与えないこと,などエコロジーの面からも非常に優れた特徴を有している.
RBセラミックスの摩擦係数と比摩耗量及び摩擦係数とすべり速度の関係
図3 RBセラミックスの摩擦係数と比摩耗量     図4 摩擦係数とすべり速度の関係

また, RBセラミックス粉体と各種材料との複合化も可能であり,様々な材料との複合化により,新たな性質を有する第二段階の材料開発を盛んに行っています(図5)

RBセラミックス粉体と各種材料の複合化による第2段階の材料開発
図5 RBセラミックス粉体と各種材料の複合化による第2段階の材料開発

RBセラミックスを用いた低摩擦・耐摩耗摺動要素の開発

RBセラミックスの大気中無潤滑下における低摩擦・優れた耐摩耗性を活かし,機械部品メーカーとの共同研究により,1998年に図6に示されるような,RBセラミックスをスライダに用いた完全無潤滑タイプの直動すべり軸受を開発し,実用化を達成しています.この軸受は,RBセラミックスをスライダに用いることによって,潤滑油不要,既存の転がりタイプの直動ガイドに比べ,低騒音,1m/s以上の高速駆動可能,水中での使用が可能などの優位性を有しており,主に潤滑油の使用を好まない食品加工機やプレス機械等に用いられています.近年では,真空中で使用可能な,すべり軸受の開発が求められており,RBセラミックスの真空環境における摩擦・摩耗特性の解明を行い,真空対応無潤滑すべり軸受の開発を行っています.

また,RBセラミックス粒子は多孔質構造を有することから,かさ密度が熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のそれと同等の低い値(1.0〜1.5g/cm3)を示します.このためRBセラミックス粉体は樹脂に対する分散性に優れ,またその混合物は流動性が良好であるため,樹脂に対してRBセラミックス粉体を85wt%配合しても射出成形が可能です.さらに,RBセラミックス粉体を樹脂に配合することにより,大気中無潤滑下および油潤滑下において,摩擦係数の低減,スティックスリップの抑制および耐摩耗性の飛躍的向上が達成されています.

このような一連の研究に基づいて,伝動機メーカーと共同で,フェノール樹脂にRBセラミックス粉体を配合した低摩擦・耐摩耗複合材料を用いた無潤滑タイプのステンレスチェーンを開発しています(図7).この無潤滑ステンレスチェーンは,従来のステンレスチェーンに比べ,11倍以上の長寿命を示し,すでに実用化されています.

RBセラミックスを用いた完全無潤滑タイプの直動すべり軸受
図6 RBセラミックスを用いた完全無潤滑タイプの直動すべり軸受

フェノール樹脂/RBセラミックス複合材料を用いた無潤滑チェーン
図7 フェノール樹脂/RBセラミックス複合材料を用いた無潤滑チェーン

RBセラミックスを用いた高摩擦材料の開発と応用

ゴムやウレタンなどのエラストマ−は,真実接触面積が著しく大きいことなどから,乾燥面に対しては非常に高い摩擦を示すことが知られていますが,水や油などで濡れた面に対しては,接触圧力が著しく低くなるため,接触面間に水膜,油膜などの流体膜が形成されやすく,低摩擦となりやすい特徴を有しています.

一方,RBセラミックス粉体をゴムに2〜8wt%配合することによって,水に濡れた面に対する摩擦係数が,ゴム材料のおよそ2〜5倍に増加します(図8,図9).このように,RBセラミックス粉体を配合することによって,ゴムなどのエラストマ−の水濡れ面に対する耐滑性を向上させることも可能です.また,RBセラミックス粒子を配合することにより,ゴムの耐摩耗性が飛躍的に向上することも明らかとなっています.

このRBセラミックス粒子配合ゴムの高い摩擦を利用して,靴メーカー等との共同研究により,RBセラミックス粉体を従来の靴底用ゴムに配合した耐滑靴底材料を開発し,すべりにくい紳士靴,安全靴,サーキットシューズやサンダルなどを開発しています(図10).この他にも,RBセラミックスをゴムやウレタンに配合した複合材料は,高摩擦材料として様々な用途に応用され,靴底用すべり止めシート,レース用ハイグリップ自転車タイヤ,ローラー駆動式車椅子用電動駆動ユニットの駆動ローラー,高圧配電線自動点検装置の駆動プーリ−などとして実用化が達成されています.

水潤滑下における静摩擦係数と荷重の関係
図8 水潤滑下における静摩擦係数と荷重の関係

RBセラミックス粒子配合による水濡れ面に対する摩擦増加のメカニズム図
図9 RBセラミックス粒子配合による水濡れ面に対する摩擦増加のメカニズム図

RBセラミックス粒子配合ゴムを靴底に用いた耐滑履物群
図10 RBセラミックス粒子配合ゴムを靴底に用いた耐滑履物群

もみ殻を原料とする硬質多孔性炭素材料の開発

もみ殻は,米の副産物としてわが国で年間200万トン以上発生する,シリカを20wt%ほど含む貴重な資源です.本研究室では,もみ殻を原料とする硬質多孔性の炭素材料を開発し,その摩擦・摩耗特性について研究を行っています.これまでに,このもみ殻を原料とする硬質多孔性炭素材料は,大気中無潤滑下において,0.05あるいはそれ以下の非常に低い摩擦係数を示すことを明らかにしています.

ボブスレーの力学解析及び低摩擦ボブスレーランナーの開発

ボブスレーの力学解析を行い,タイム短縮に効果的な新しいスタート方式「蹴り乗り」を提案しています.また,長野オリンピック日本代表チーム用に低摩擦のボブスレーランナー(刃)を理論的に設計・開発し,国産ランナーとして初めて長野オリンピックにおいて採用されています.現在も,日本代表チーム用のボブスレーランナーの設計を行っており,さらなるタイム向上を目指しています.

堀切川・山口(健)研究室で設計した低摩擦ボブスレーランナーとボブスレーのスタートの様子
図11 堀切川・山口(健)研究室で設計した
低摩擦ボブスレーランナーとボブスレーのスタートの様子

摩擦・摩耗試験システムの開発

潤滑下における摩耗過程のミクロな現象を連続的に観察できる「CCDマイクロスコープ・トライボシステム」を開発しています.また,一度の試験で種々の荷重下の摩擦・摩耗データを取得できる「連続荷重変動型摩擦摩耗試験システムHHS-2000,HHS-3000」を開発し,実用化させています.さらに,靴底や屋内床面,屋外路面の耐滑性評価を現場で行うことができる,移動型靴/床面間静・動摩擦係数測定装置を開発しています.この装置を用いて,歩道用コンクリート平板や屋内用床材料の耐滑性評価や,靴底の耐滑性評価を行い,すべりにくい床材や靴底の研究開発を行っています.

靴・床の静摩擦係数測定装置及び連続荷重変動型摩擦摩耗試験システム
図12 連続荷重変動型摩擦摩耗試験システム   図13 移動型靴/床面間静・動摩擦係数測定装置

歩行中の靴底と床面のすべりに起因する転倒の防止に関する研究

国内における屋内外での転倒事故による死亡者数は年々増加しており,現在では年間5,000名弱の方が転倒事故によって命を落としています.また,転倒事故死亡者の大きな割合を65歳以上の高齢者が占めており,高齢社会に突入した日本やそのほかの先進国において,転倒事故防止の対策が急務の課題となっています.転倒事故の原因としては,つまづき,よろめき,すべりなどが考えられますが,「靴底と床の間のすべり」はその中でも大きな割合を占めているのが現状です.本研究室では,このような「靴底と床の間のすべり」に起因する転倒事故の防止を目的として,すべりを生じにくい歩行動作の研究や,濡れた面に対しても優れた耐滑性を示す靴底パターンの研究を行っています.また,歩行中(立位時)の靴底と床のすべりに起因する転倒のメカニズムについて,モーションキャプチャーシステムによる動作解析とフォースプレートを用いた床反力解析を組み合わせることにより解明することに取り組んでいます.

立脚相における床反力と靴底/床の接線力係数
図14 立脚相における床反力と靴底/床の接線力係数

靴底と床の間のすべりに起因する転倒の様子
図15 靴底と床の間のすべりに起因する転倒の様子

高機能ねじ切り用タップの開発

企業との産学連携により,これまでにない,硬質粒子を表面に電着により被膜したねじ切り用タップ工具を開発し,これまでに,高速度の加工条件(従来の5倍)において切りくずの巻き付きを抑制できることを明らかにしています.これにより,加工速度の向上が可能であり,かつ,切りくず除去の時間ロスを低減でき,ねじ切り工程における加工能率の大幅な向上が期待できます.

硬質粒子電着タップ
図16 硬質粒子電着タップ

肌触り感の良いティシューペーパーの開発

企業との産学連携により,業界初の新たな品質評価の指標「肌への摩擦指数」を見出すことに成功し,その新しい知見を品質改良に生かし,コストを上げることなく,生活者の不満を解決するきめ細やかななめらかさで鼻が赤くなりにくいティシューペーパーの開発に成功し,製品化に至っています.